2011年7月30日土曜日

「顔晴る」

先日、年甲斐もなく、平原綾香のコンサートを聴きに行った。幕開けの「ジュピター」から、アンコールのNHK連続ドラマテーマ曲「おひさま――大切なあなたへ」まで、約2時間半にわたるステージは楽しかった。けれども、歌以上に強く印象に残ったのは、彼女が歌の合間に語った「がんばる」という言葉。彼女はブログでもステージでも、この言葉を「顔晴る」という意味で書き、語っているそうだ。彼女にとって、がんばるとはつまり「顔が晴れる」こと。人前で歌い、人とつながるとき、いつも晴れ晴れとした表情でいたい、という意味をこめて使っているという。
この話を聞いて、なるほど、と思った。人を励まし、元気付け、明るくするというのが歌い手の役割と考えれば、「憂愁の王女さま」や「憂い顔の紳士」は、似合わない。いつも晴れ晴れした表情で、人を明るくすることが求められる。たとえ、内面に屈託を抱えていても、人前に出て仕事をする以上、その屈託を一目にさらすようでは、半人前。プロではない。そんな決意を表現するために「顔晴る」と言い続ける彼女に、プロ意識を持って働く社会人の一人として共感したのである。
一歩門を出れば、七人の敵がいるという。同時に「袖振り合うも他生の縁」という言葉もある。敵もあり、自分に注目してくれる人もいるというのが世間である。社会で働く人間でも、大学で学ぶ立場であっても、社会と没交渉では過ごせない。
ならば、外に出ているときだけでもいい。意識して「顔晴る」で過ごしてはどうだろう。晴れ晴れした表情で、人を明るくし、自分も元気付ける。自らの内なる憂愁、煩悶と向き合うのは、深夜、一人でいるときで十分だ。(石)