2011年8月3日水曜日

秋入学への全面移行は可能か

先月、東京大学が国際化を目指して秋入学を検討していることが報道され、世間の注目を集めている。
 そもそも、1886年(明治19)に帝国大学令によって帝国大学ができたとき、学年は9月始期制度に統一された。教官らの多くは外国人であったので、自然な流れであったろう。
ところが同年、教育の総本山と位置付けられていた高等師範学校が4月始期制を採用する。理由は明確ではないが、会計年度に合わせる方が学校会計の処理に適していたり、徴兵令の影響があったりしたと考えられている。
すると、数年後には尋常師範学校、小学校、中学校、高等女学校も4月始期制を採用。義務教育と教員養成機関にすっかり定着した。その後、東京帝国大学も仕方なく4月始期制に改めることとし、高等学校規程にも盛り込まれ、日本の大学全てに影響した歴史がある。
翻って1987年(昭和62)、当時の内閣総理大臣・中曽根康弘首相の私的諮問機関であった臨時教育審議会の最終答申では、9月始期制が重要議題であったが結論は出なかった。仮に私立大学が秋入学に全面移行するなら、半年分の収入を失う財政保障は莫大な額になる。
関学でも95年以降、秋学期入学を積極的に実施した学部があったが、多くの学生は就職時期に合わせて3月に卒業することを希望し、実質4.5年在籍することに。年々入学者は減少し10年足らずして秋学期入学を取りやめた。(3つの研究科は秋学期入学を実施しています。)
 2007年の教育再生会議第3次報告では、4月入学原則を撤廃した学校教育法施行規則の改正を踏まえて9月入学を促進することが謳われているが、全面移行にはほど遠い。
 東大は抜本的な改革を検討しているようだが、そのハードルはあまりに高い。高等教育関係者の多くは期待して9月入学への移行を待ち望んでいるが、東大がどのような結論を出すのか注視したい。(しろくま)
(参考文献:寺崎昌男 2007,『東京大学の歴史―大学制度の先駆け―』 講談社学術文庫.)