2013年5月10日金曜日

鈍感のすすめ

 新社会人になる若い人からよく訊かれる。「社会に出て一番大切なことは何ですか」と。わたしはためらいなく答える。「鈍感力だよ」って。

 断っておくけど、渡辺淳一が『鈍感力』という本を書くずっと以前から、わたし、鈍感力という言葉を使っているもんね。決して大作家を剽窃したのではない。
 その意味では、わが幼馴染みの風呂屋の長谷部恭子ちゃんが、50年以上も自分のことをハセキョーと名乗っているのと同列。われらの方が本家本元なのだ。

で、まあそんなことはどうでもいい。
わたしの言う「鈍感力」とは、「鈍感になれる能力」という意味だ。どんな組織でも間尺に合わない理屈をこねて人の足元をすくおうとする輩が必ずいる。
そんなときその理不尽に反発し、きちんと論駁するのもいい。しかし、いつものことだとストレスがたまる。そういう時はあえて「鈍感」になって聞き流してごらんよ、と若い人にアドバイスする。

むずかしいことではない。
脳ミソを思い切り弛緩させ、くだくだしい話を脳内で消去処理するだけ。つまらないデータは一滴も神経細胞に残さず、ばかな話は深く考えない。
そうすることで、意味もなく自信をなくしたり職場で落ち込んだりすることもなく、いやな相手でも嫌いにならずにすむ。要するに無駄なけんかはしないことだ。

 新しく社会に出ると、あれをしたい、これもしよう、と人は希望と向上心に燃える。
 その心意気やよし。その前向きな気持ちを持続する隠しわざとして、したたかな鈍感力をもつことをぜひお奨めする。(の)