2013年7月4日木曜日

人がする仕事

東京の大学の研究室が「玄関の靴かたづけロボット」を開発した、と新聞に出ていた。天井に設置したセンサーカメラが乱雑に脱ぎ捨てた靴を感知すると、おかたづけボードがちょこまか動いて靴をすくいあげ、整理してくれるという。
へぇー。
そこまでするか。でもこれって生活に必要な発明なの?

それで思い出した。
ものづくりの町、東大阪市で自称「河内の発明王」から話を聞いたことがある。
一番の自信作は電動パスタフォーク。このフォークをスパゲティに突き立ててスイッチを入れると、フォークの先がくるくる回って麺を巻き取る仕組み。しかし実際にやるとパスタが飛び散り、ミートソースが顔面にぶっかかった。発明王はデヘヘと頭をかいて、きつねうどんでも出来ると言ったが、やけどしそうで断った。

次に出てきたのが万能ティースプーン。これもスイッチを入れるとスプーンの先が高速で回転し、砂糖とミルクをかきまぜるという珍品。「これのどこが万能ですか」と聞くと、「コーヒーでもカクテルでも使えまっせ」。なるほどそういう意味か。
ためしに奥様が淹れてくれたコーヒーでやってみると、ブィーンという音とともにコーヒーカップが洗濯機状態になった。

ほかにも電動スイカ種取りスティックとか、万華鏡双眼鏡とか、わけのわからない発明品がわんさか。特許はとったがどこも商品化してくれないという。
「アホでしょ、この人」と奥様が呆れ顔で旦那を振り返ったが、そのまなざしは優しい。洗濯機のようにぐるぐる回るコーヒーをいただきながら、ご夫婦のむつまじさにほっこりした。

 必要は発明の母と言うが、過ぎたるは及ばざるが如し、とも言う。どんなに機械文明が進んでも、最後は人がする仕事って、あるよねえ。ささやかでも、神様がそれだけは人のために残してくれた仕事っていうのが。奥様とうなずき合って辞去した。(の)