2013年7月26日金曜日

花火

 遠いむかし、戦場を取材する記者をしていた。
 ニカラグア、サラエボ、ガザ、チェチェン・・・。

 戦場取材はこわい。一歩間違えば記者も命を落とす。
 とりわけ夜の地上戦はこわい。

ドーンという地響きとともに夜空を割いて何本もの火柱があがり、上空で巨大なマグネシウムの炎が開いていく。その瞬間、漆黒に沈んでいた地上が煌々と照らし出され、目を覚ましたように迫撃砲の一斉射撃と軍用ヘリの轟音が響きわたる。

中米、南欧、中東、ロシアと、時も場所もさまざまだったが、どこでもこの世のあらゆる悲惨な光景を目にした。

この目で見た不条理な光景は記憶にとどめたくもないし、その体験を人に語ろうとも思わない。ただ、人はどこまでも愚かになれる存在だということを肌身で知った。

 夏になると大きな河原などで花火大会が催される。
 若い男女が空を見上げて、大輪の火炎に喚声をあげている。
 平和な光景の片隅に、ふとあのときの戦場の光景が重なる。

 わたしは花火が好きでない。(の)